本記事では、アプリ開発の企画書の作り方や必要な項目、さらに作成時の注意点について徹底的に解説します。この記事を読むことで、アプリ開発の企画書について深く理解できるため、ぜひ最後までご覧ください。
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執筆者:山口 鳳汰
ノーコード開発専門メディア「Walkersメディア」編集長。
ノーコードの電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。
その他、受託開発や教育など多数のノーコード事業に参画している。
運営会社:株式会社Walkers
ノーコード専門の開発会社。
300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。
マーケティングやUI/UXと掛け合わせたサービス開発を得意としている。
執筆者:山口 鳳汰
「Walkersメディア」編集長。
ノーコードの電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。
運営会社:株式会社Walkers
ノーコード専門の開発会社。
これまでに300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。
そもそもアプリ開発で企画書が必要な3つの理由とは?
【理由①】社内の合意を取るため
アプリ開発はリソースが多くかかり、プロジェクトを進めるためにはチームメンバー、経営層、さらには外部パートナーの協力が不可欠です。企画書を通じて、アプリの目的、スケジュール、予算、期待される成果などを明確に示し、関係者全員からの合意を得ることが重要です。
例えば、開発チームには技術的な要件、デザインチームにはそのアプリ画面のイメージ、マーケティングチームにはプロモーション戦略を伝える必要があります。企画書が具体的かつ明確であるほど、各チームが共通の理解に基づいて連携しやすくなり、プロジェクト全体の効率化が期待できます。
また、経営層へのプレゼンテーション時には、事業の意義や見通し、投資に対するリターンを具体的に示すことで、予算やリソースの確保がスムーズになります。
【理由②】アプリの目的や方針を見失わないため
アプリ開発は通常、数ヶ月から数年にわたる長期プロジェクトです。そのため、開発プロセスの途中で当初の目的や方針が見失われることがしばしばあります。企画書があることで、チーム全体がプロジェクトの目標や方向性を再確認し、軌道修正が必要な場合でも正確に進行できます。
例えば、初期段階ではユーザー数の増加を目指していたが、途中で収益性に重きを置く方向にシフトすることがあります。このようなケースでも、企画書に記載された目的や目標に立ち返ることで、判断の軸が明確になり、プロジェクトの一貫性を保てます。
【理由③】関係者への認識齟齬を防ぐため
アプリ開発プロジェクトには、エンジニア、デザイナー、マーケティング担当、さらには外部協力会社など、多くの関係者が関わります。それぞれが異なる役割や期待を持っているため、認識の齟齬が発生しやすいのが実情です。
企画書は、プロジェクトの全員が同じ理解を持つための「共通の指針」として機能します。企画書に、目標、ターゲットユーザー、スケジュール、必要リソースなどの情報を詳細に記載することで、各関係者がプロジェクト全体の構造を理解しやすくなります。
たとえば、デザインチームがUI/UXを設計する際も、企画書に記載されたターゲットユーザーやデザインの方向性に従って具体的な設計を行うことで、開発チームとの認識のズレを防ぐことができます。
企画書を作成する前にやるべき5つのこと
【やるべきこと①】アプリの目的を明確にする
最初に行うべきことは、アプリの目的を明確にすることです。なぜそのアプリを開発するのか、どのような課題を解決し、どのような価値をユーザーに提供するのかを具体的に考えることが必要です。目的が曖昧なままだと、開発プロセス全体が混乱し、最終的な成果にも悪影響を与えます。
【やるべきこと②】数値目標を具体的に設定する
次に、アプリが達成すべき具体的な数値目標を設定します。目標を具体化することで、プロジェクトの進捗や成功度を客観的に評価できるようになります。例えば、以下のような目標を設定します。
- ダウンロード数:初月に10,000件
- 月間アクティブユーザー数(MAU):50,000人
- アプリ内課金の売上:初年度で100万円
数値目標が明確であれば、開発チームも具体的な目標に向けて作業を進めやすくなりますし、進捗管理や目標達成に向けたモチベーションの維持にも役立ちます。また、経営層や投資者に対しても、説得力のある目標設定を示すことができます。
【やるべきこと③】ペルソナを明確にする
アプリのターゲットユーザーを具体的に定義するために、「ペルソナ」を設定します。ペルソナとは、アプリの典型的なユーザー像を詳細に描写したものです。年齢、性別、職業、居住地、趣味、ライフスタイル、アプリに期待することなどを明確に設定します。
例えば、ターゲットが「20代の女性で健康管理に興味がある人」の場合、彼女たちがどのような悩みを抱えていて、アプリがどのようにそれを解決できるのかを考えます。これにより、開発する機能やデザインがユーザーにとって最適なものとなるように企画を進めることができます。
【やるべきこと④】競合との差別化点を明確にする
市場には多くの競合アプリが存在します。そのため、競合アプリとの違いを明確にすることが重要です。企画書を作成する前に競合アプリを徹底的に調査し、それらが提供している機能やデザイン、ユーザー体験を分析します。
例えば、競合アプリがすでに提供している基本機能に加えて、独自の特徴や新しい技術(AIチャットボットの導入など)を企画することで差別化を図ります。また、ユーザーインタビューやアンケートを活用し、競合アプリの改善点を探り、そこにフォーカスした機能を開発することも有効です。
【やるべきこと⑤】開発手法について理解しておく
アプリ開発には主に「フルスクラッチ開発」と「ノーコード開発」があります。
フルスクラッチ開発とは「アプリを0から完全にプログラミング言語で構築する従来の開発手法」です。開発の自由度が高く、細かなカスタマイズが可能という特徴があります。
ノーコード開発とは「コードを書かなくてもアプリ開発ができる画期的なサービスを使った開発手法」のことを言います。非常に複雑すぎるアプリは開発できませんが9割以上のアプリでは以下のように50%以上のコスト削減を実現できます。
また、アプリの開発期間も1/2ほどに短縮できるため、多くのケースではノーコード開発を推奨しています。
詳しくノーコードについて知りたい方はノーコードとは?デメリットや限界、アプリ事例まで徹底解説!【プロが解説】でまとめておりますので、そちらをご覧ください。
企画書に盛り込むべき13個の項目
企画書には具体的な項目を盛り込むことが大切です。ここでは、企画書に欠かせない13個の項目についてさらに詳細に解説します。
【項目①】アプリの種類(Webアプリorネイティブアプリ)
まず、アプリがWebアプリなのか、ネイティブアプリなのかを明確に定義します。
アプリの種類によって開発の進行方法や必要なリソースが異なるため、企画書の初期段階で決定しておくとよいでしょう。
それぞれの特徴は以下の通りです。
項目 | ネイティブアプリ | Webアプリ |
---|---|---|
動作場所 | 端末(スマートフォンやタブレット)のアプリ上で動作 | Webブラウザ上で動作 |
インストールの必要性 | アプリストアからダウンロードしてインストールが必要 | インストール不要、ブラウザで直接利用可能 |
オフライン利用 | オフラインでも一部の機能は利用可能 | 通信環境が必要、オフラインでは利用不可 |
動作速度 | 高速でスムーズな動作が可能 | ネイティブアプリほどではないがスムーズな動作が可能 |
デバイス機能の利用 | カメラ、GPS、プッシュ通知などのデバイス機能をフル活用可能 | デバイス機能の利用は制限される(例:カメラは使用できない) |
手数料と審査 | アプリストアの審査が必要で、手数料が発生する | 審査不要で手数料も発生しない |
開発コスト | OSごとに異なるため開発コストが高くなることが多い | 一度の開発で複数のOSに対応可能なため、コストを抑えやすい |
ただし多くの企業様はネイティブアプリを希望されますが、そのうちの80%以上は「Webアプリでも十分」な場合が多いです。
Webアプリとして開発することで50%以上の費用を削減できることもあるため、予算を抑えたいという場合はWebアプリを視野に入れて開発を進めるのがよいでしょう。
【項目②】対応させるOS・デバイス
Webアプリの場合はどのOSやデバイスでも問題ありませんが、ネイティブアプリの場合は対応するOSやデバイスを記載します。iOS、Androidのスマートフォン、タブレットなど、どのプラットフォームに対応させるかを決定しましょう。
総務省「情報通信白書 令和5年版|日本のスマートフォン市場のシェア」によると、日本でのシェア率は以下のようになっています。
iPhone | Android |
---|---|
67.7% | 32.3% |
よって、ネイティブアプリとして開発する場合はどちらにも対応することが多いですが、どちらか優先する必要がある場合はiPhoneを優先して開発するとよいでしょう。
【項目③】必要最低限の機能
アプリを開発する際はMVP開発から行うのが基本であるため、まずは必要最低限の機能を具体的に記載します。例えば、ログイン機能、ユーザーのプロフィール管理、通知機能、チャット機能、検索機能などが考えられます。
必要最低限の機能を明確にすることによって、市場での需要や仮説を早期に検証し、無駄なリソースを最小限に抑えつつ、効果的なプロダクト開発を実現することが可能になります。
多くの場合、完璧なプロダクトを作るよりも、まずは最低限の価値を提供できる製品を市場に出すことが重要となっています。
»関連記事:MVP開発とは?アジャイル開発との違いからメリット、手順まで完全解説!
【項目④】市場ニーズ調査の結果
市場ニーズ調査は、アプリがユーザーにどれだけの価値を提供できるかを確認するために必須です。ターゲットユーザーが求めているであろう機能や利便性、デザイン、使い勝手に関する調査結果をまとめ、企画書に記載します。
例えば、ユーザーアンケートやインタビュー、既存アプリのレビュー分析などの手法を用いて、ユーザーが実際に求めている機能や改善点を明らかにし、それに基づいてアプリの設計を進めます。
【項目⑤】競合調査の結果
競合調査の結果も企画書に盛り込みます。競合アプリがどのような機能やデザインを提供しているか、どのように収益化しているかを詳細に分析し、自社アプリが市場でどのような立ち位置を取るべきかを決定します。
例えば、競合アプリが提供していない新機能をまとめたり、UI/UXデザインを改善することで、差別化を図ることができます。また、競合アプリのユーザーレビューを分析することで、ユーザーが何を不満に感じているのかを把握し、自社アプリの改善ポイントとして反映させます。
【項目⑥】デザインのイメージ
アプリのデザインコンセプトや操作画面のイメージを明確に記載します。具体的には、色彩、フォントスタイル、ボタン配置、アニメーションなどの要素を企画書に盛り込み、デザインチームがアプリのデザイン面での統一性を保てるようにします。
例えば、ターゲットが若い世代であれば、ポップなカラーや直感的な操作画面を採用し、シンプルでスムーズな操作感を重視したデザインが求められるでしょう。
【項目⑦】収益化戦略
アプリの収益化戦略も重要です。広告収入、アプリ内課金、サブスクリプションモデル、プレミアム機能の導入など、どのように収益を上げるかを企画書に記載します。また、それぞれのメリットとデメリット、リスクも明確にします。
例えば、無料版と有料版の2つのモデルを用意し、有料版でのみ利用可能な機能を設定することで、ユーザーがプレミアム版に移行しやすくするなど、効果的な収益モデルを構築します。
»関連記事:【実証済み】アプリを収益化する方法11選|事例付きで完全解説!
【項目⑧】マーケティング戦略
アプリのマーケティング戦略も企画書には欠かせません。SNS広告、SEO対策、インフルエンサーを活用したプロモーションなど、具体的な施策を計画します。これにより、リリース後のユーザー獲得が円滑になります。
たとえば、リリース直後にSNSでのキャンペーンを行い、早期ユーザー獲得を目指したり、SEOキーワードを最適化して検索エンジンでの露出を増やすなどの施策が有効です。
【項目⑨】アプリ開発の体制
アプリ開発に関わるチームメンバーや外部パートナーの構成、役割分担を明確にします。各メンバーの責任範囲を企画書に記載し、全員が自分の役割を理解できるようにします。
例えば、開発チームの中でフロントエンドとバックエンドの担当者を分けたり、外部のデザイン会社と連携しながら進める場合には、それぞれの役割と協力体制を明確にすることで、スムーズなコミュニケーションと進捗管理が可能になります。
【項目⑩】開発費用(デザインやテスト含む)
開発費用は企画書の中で非常に重要な項目です。アプリ開発、デザイン制作、テストなどを含めた詳細な費用を見積もり、予算に記載します。これにより、計画段階での資金計画が立てやすくなります。
大まかな開発費用については、以下の内容をご参考ください。
※リンクのクリックでそれぞれの記事へ移動できます
アプリの種類 | ノーコード | フルスクラッチ |
---|---|---|
マッチングアプリ | 200〜550万円 | 500〜1,200万円 |
SNSアプリ | 200〜500万円 | 400〜1,300万円 |
AIアプリ | 50〜500万円 | 200〜1,500万円 |
予約管理アプリ | 100〜500万円 | 350〜1,000万円 |
SaaS・業務システム | 150〜1,000万円 | 500〜2,000万円 |
eラーニング・学習アプリ | 50〜400万円 | 1,000〜2,000万円 |
チャットアプリ | 100〜450万円 | 300〜1,000万円 |
CMS | 100〜400万円 | 250〜1,000万円 |
ECアプリ | 50〜700万円 | 1,000〜2,500万円 |
»関連記事:【シミュレーション付き】アプリ開発費用の相場まとめ
【項目⑪】運用費用
アプリはリリース後も運用が必要です。サーバーの維持費、更新費用、ユーザーサポート費など、運用にかかるコストもあらかじめ見積もり、予算計画に含めます。
たとえば、クラウドサーバーの使用料やアプリの保守・管理を行うためのスタッフの人件費などを明確にし、継続的に収益と支出のバランスが取れるように運用計画を立てます。
【項目⑫】マーケティング費用
アプリリリース後のプロモーションや広告にかかる費用も具体的に計算し、予算に組み込みます。リリース後にどのような広告を行うのか、キャンペーンの種類、SNS広告費用などを詳細に記載することで、予算計画が現実的かつ効果的になります。
たとえば、リリース1ヶ月前からSNSでのプレローンチキャンペーンを実施し、リリース初月にユーザーが増加するよう計画を立てることが有効です。
【項目⑬】評価指標(KPI)
アプリの成功を測定するためのKPIを設定します。ユーザー数、ダウンロード数、アクティブユーザー数、リテンション率、収益など、具体的な数値を記載し、それをどのように測定するかを企画書に記載します。
例えば、ダッシュボードを用意してKPIをリアルタイムで追跡し、月次で評価を行い改善点を探るなど、データに基づいた運営ができる仕組みを作ります。
企画書を作成する際の3つの注意点
【注意点①】開発コストは余裕を持って見積もる
アプリでは開発が完了した後も市場のニーズに応じて継続的に改善を行う必要があります。
2018年の日経 xTECHの調査によれば、コストが予算を超過したプロジェクトの60%以上は「追加開発」が原因とされています。
修正や追加開発にかかる費用は内容によって異なりますが、大規模な修正の場合、100万円以上の費用がかかることもありますので、注意が必要です。
そのため、修正や追加開発に備えて、事前に開発予算を確保しておくことが非常に重要です。
【注意点②】著作権を侵害していないか確認する
アプリ開発において、デザインや機能、ロゴ、テキストなどの知的財産権に関しては必ず確認が必要です。特に、他社アプリと似たような機能やデザインを使用する場合は、事前に著作権の調査を行い、トラブルを未然に防ぎましょう。
オープンソースのものを使用する場合も、ライセンス条件を遵守する必要があります。
【注意点③】法律面で問題ないか確認しておく
アプリ開発においては、法律面で問題ないか確認しておくことも重要です。主に以下の法律について注意が必要です。
- 特定商取引法
- 消費者との取引に関するルールを定めており、アプリ内での販売やサービス提供において、事業者が消費者に対して必要な情報を提供する義務があります。具体的には、アプリ名、提供元企業名、連絡先、販売価格などの情報を明示する必要があります。
- 景品表示法
- アプリ内での景品やプレゼントの表示には規制があります。この法律は、誇大広告や虚偽表示を禁止しており、消費者に誤解を与えないよう正確な情報提供が求められます。
- 出会い系サイト規制法
- 出会い系アプリを運営する場合、この法律が適用されます。特に18歳未満の利用者への対策や、有害情報の排除が求められます。年齢確認や本人確認の記録を保持することも重要です。
- 個人情報保護法
- ユーザーから収集した個人情報の取り扱いには厳重な管理が求められます。この法律は、不正利用や漏洩を防ぐために存在し、プライバシーポリシーや利用規約の整備が必要です。
- 不正競争防止法
- 偽装や誇大広告などの不正行為を防止し、公正な競争を確保するための法律です。特にアプリ開発者は、不正競争行為を避けるために注意が必要です。
- 資金決済法
- アプリ内で電子マネーやポイント制度を導入する場合、この法律が適用されます。特に、前払い式のポイント制度を導入する際には、未使用残高の一定額を供託する義務が生じることがあります。
- 外部サービスやAPI利用に伴う法的リスク
- 外部サービスやAPIを利用する際には、その利用規約や契約内容を遵守しなければなりません。著作権や個人情報保護に関するリスクも考慮する必要があります。
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