【具体例つき】要件定義とは?決めるべき9項目や進め方8ステップ、成功させるための6つのポイントまで完全解説

本記事では、要件定義の基本的な概念から応用までを具体例付きで詳しく解説します。
この記事を読むだけで、要件定義の抑えるべき部分について完全理解できますので、ぜひ最後までご覧ください。

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執筆者:山口 鳳汰
 

執筆者:山口 鳳汰
ノーコード開発専門メディア「Walkersメディア」編集長。
ノーコードの電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。

その他、受託開発や教育など多数のノーコード事業に参画している。

運営会社:株式会社Walkers

運営会社:株式会社Walkers
ノーコード専門の開発会社。
300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。
マーケティングやUI/UXと掛け合わせたサービス開発を得意としている。

執筆者:山口 鳳汰

執筆者:山口 鳳汰
「Walkersメディア」編集長。
ノーコードの電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。

運営会社:株式会社Walkers

運営会社:株式会社Walkers
ノーコード専門の開発会社。
これまでに300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。

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要件定義とは?

要件定義とは「新しいシステムやソフトウェアを作る前に“何を作るのか”や“どんな機能が必要か”を決める作業」です。

例えば、お店の会計システムを作る場合、「商品を登録できる」「売上を計算する」「レシートを印刷する」といった具体的な機能を決めていきます。また、「何秒以内で処理を終える」「個人情報を守る」といった、システムの性能や安全性についても決めます。

この作業は、開発者が開発する内容を理解して、実現できる形にまとめることが目的です。最初にこの作業をしっかり行うことで、作業の手戻りを防ぎ、予算と時間を守ることができます。

要件定義で決めるべき9項目

要件定義で決めるべき9項目

【項目①】開発をする目的や背景

要件定義で最も重要な要素の一つが、「なぜこの開発が必要なのか?」という目的や背景です。この目的が明確でないと、プロジェクトの方向性が定まらず、途中で開発内容が変わってしまったり、完成したシステムが顧客の期待と異なるものになってしまう原因となります。

具体的には、現状の課題や解決すべき問題点を明確にし、なぜシステム開発が必要なのかを整理する必要があります。たとえば「業務の効率化」「サービス品質の向上」「データの一元管理」などの目的が考えられますが、単に目的を設定するだけでは不十分です。目的の達成に向けた具体的なゴールや期待される効果も明確にすることで、開発するシステムが本来の役割を果たせるようになります。

販売管理システムの場合の例

当社では現在、販売管理業務の大部分を手作業で行っており、以下の課題を抱えている。

  • 受注から出荷までの業務処理に時間がかかり、顧客への納期回答が遅い
  • 在庫管理が紙台帳で行われており、正確な在庫把握が困難
  • 売上集計に多大な工数を要し、経営判断のための情報提供が遅延

これらの課題を解決するため、販売管理業務を効率化・自動化する販売管理システムを構築する。本システムの導入により、以下の効果を目指す。

  • 受注から出荷までのリードタイム50%削減
  • 在庫の正確なリアルタイム把握による欠品防止
  • 売上情報の即時把握による迅速な経営判断の実現

【項目②】アプリ・システムの概要

システムの概要は、開発するシステムがどのような役割を果たし、どのような機能を持つのかを大まかに示すものです。

システムについて100〜200文字程度で簡潔に概要をまとめましょう。

販売管理システムの場合の例

本システムは、現在手作業で行っている販売管理業務を効率化・自動化するためのWebシステムです。受発注管理、在庫管理、売上管理の各機能を提供し、受注から出荷までのリードタイム短縮、在庫のリアルタイム把握、売上情報の即時確認を実現します。既存PCからブラウザでアクセスでき、データは社内サーバーで一元管理します。

【項目③】開発の進め方・役割分担

プロジェクトを円滑に進めるためには、開発の進め方と各メンバーの役割を明確にすることが不可欠です。ここでは、プロジェクトのフェーズ(設計、実装、テスト、リリースなど)ごとの主要なタスク、各メンバーの担当範囲、プロジェクトリーダーや管理者の役割などを定めます。

具体的な役割分担を行うことで、責任の所在が明確になり、各メンバーが自分のタスクに集中しやすくなるため、開発効率が向上します。また、役割分担を明記しておくことで、問題が発生したときに迅速に対応できる体制が整えられます。

  • プロジェクトオーナー:○○部 部長 △△△△
  • プロジェクトマネージャー:××部 課長 □□□□
  • 開発リーダー:開発部 主任 ▽▽▽▽ etc.

【項目④】開発手法

アプリ開発には主に「フルスクラッチ開発」と「ノーコード開発」があります。

フルスクラッチ開発とは「アプリを0から完全にプログラミング言語で構築する従来の開発手法」です。開発の自由度が高く、細かなカスタマイズが可能という特徴があります。

ノーコード開発とは「コードを書かなくてもアプリ開発ができる画期的なサービスを使った開発手法」のことを言います。非常に複雑すぎるアプリは開発できませんが9割以上のアプリでは以下のように50%以上のコスト削減を実現できます。

従来の開発とノーコード開発の費用の比較
従来の開発とノーコード開発の費用の比較と内訳

また、アプリの開発期間も1/2ほどに短縮できるため、多くのケースではノーコード開発を推奨しています。

従来の開発とノーコード開発の期間の比較
従来の開発とノーコード開発の期間内訳の例

この「フルスクラッチ開発」と「ノーコード開発」、どちらを利用するのかは決めておきましょう。

【項目⑤】実装する機能・画面(機能要件)

機能要件は、システムが持つべき具体的な機能や画面の仕様を指します。ユーザーがどのような操作を行うのか、どのような画面が必要なのか、どのようなデータを取り扱うのかなどを詳細に記述します。

例えば、ECサイトの開発であれば、「商品検索機能」「カートに入れる機能」「注文履歴の表示機能」などが機能要件に含まれます。また、デザインも考慮しながら、各画面での操作性に関する要件も明確にしておくと、開発者が迷わずに実装作業を進められ、期待通りのシステムが実現しやすくなります。

販売管理システムの場合の例

■販売管理機能

  • 見積書の作成・管理(顧客マスタ、商品マスタとの連携)
  • 受注情報の入力・修正・検索
  • 売上データのリアルタイム管理と分析
  • 請求書発行と債権管理
  • 返品・クレーム情報の登録と管理

■在庫管理機能

  • 出荷指示の作成と管理
  • 入荷予定・実績の管理
  • リアルタイムでの在庫数管理
  • バーコード・QRコードによる在庫管理
  • 在庫評価・予測機能

■購買管理機能

  • 発注管理(発注書作成、発注状況管理)
  • 仕入れ管理(仕入実績管理)
  • 支払い管理(支払予定、実績管理)

■データ分析機能

  • ダッシュボードによる各種データの可視化
  • 売上・在庫データの傾向分析
  • BIツールとの連携による高度な分析

■外部連携機能

  • モバイルアプリとの連携(外出先での情報確認・入力)
  • 顧客管理システム(CRM)との連携
  • 基幹システムとのデータ連携

【項目⑥】必要な性能(非機能要件)

非機能要件には、システムの性能(表示速度、処理能力)やセキュリティ、可用性、拡張性などが含まれます。たとえば、「1秒以内に検索結果を表示できるようにする」「24時間365日稼働可能にする」といった基準を設定します。

適切な非機能要件を設定することで、ユーザーが快適に利用できるシステムを提供できます。また、セキュリティに関する要件もこの段階で明確にしておくと、後からの設計変更を避けることができ、スムーズな開発が可能になります。

販売管理システムの場合の例

■可用性

  • 稼働時間:平日9:00-18:00(営業時間内)
  • 計画停止:月1回の定期メンテナンス(休日実施)
  • バックアップ:日次でのデータバックアップ実施

■性能・拡張性

  • 画面レスポンス:通常3秒以内、ピーク時5秒以内
  • 同時接続ユーザー数:50名まで
  • 将来的なユーザー数20%増加に対応可能な拡張性確保

■運用・保守性

  • 保守窓口:平日9:00-17:00
  • 操作マニュアルの提供
  • 定期的なパッチ適用とバージョンアップ対応

■セキュリティ

  • ユーザー認証:ID/パスワードによるログイン管理
  • アクセス制御:部署・役割に応じた権限設定
  • パスワードポリシー:90日ごとの変更必須
  • 通信の暗号化:SSL/TLS対応
  • 操作ログの取得と保管(1年間)

■移行性

  • 現行システムからのデータ移行
  • 休日を利用した切り替え作業の実施
  • 移行リハーサルの実施
  • 切り戻し手順の整備

■システム環境

  • Webブラウザでの動作保証(Chrome、Edge最新版)
  • 社内ネットワークからのアクセスのみ許可
  • 既存のクライアントPCでの動作保証
  • 社内データセンターでの運用

【項目⑦】開発スケジュール

プロジェクトのスケジュールは、納期を守るために非常に重要な項目です。開発の各フェーズごとに必要な時間を見積もり、具体的なタスク完了時期を設定します。スケジュールを明確にすることで、関係者が進捗状況を把握しやすくなり、納期遅れを未然に防ぐことができます。

販売管理システムの場合の例

【開発期間】

  • 全体期間:約7ヶ月(2024年11月~2025年5月)

【フェーズ別スケジュール】

  • 要件定義(1ヶ月):11月
    • 業務分析
    • 要件整理
    • システム化範囲確定
  • 外部設計(1.5ヶ月):12月~1月中旬
    • 画面設計
    • 帳票設計
    • システム構成設計
  • 内部設計(1.5ヶ月):1月中旬~2月末
    • DB設計
    • 詳細機能設計
    • インターフェース設計
  • 開発(2ヶ月):3月~4月
    • プログラミング
    • 単体テスト
    • 結合テスト
  • テスト(1ヶ月):5月
    • 総合テスト
    • ユーザー受入テスト
    • 運用テスト
  • 移行・リリース(2週間):5月中旬~下旬
    • データ移行
    • 本番環境構築
    • 運用開始

【項目⑧】開発費用

開発費用はプロジェクトの予算に直結する重要な項目です。各工程ごとのコストを見積もり、全体の費用を明確にします。予算をオーバーしない範囲で開発計画を立てることが求められ、もし追加の費用が必要な場合は、プロジェクト開始前に関係者へ合意を得ることが望ましいです。

開発費用の見積もりをしっかり行うことで、後々のコスト管理がしやすくなり、無駄な出費を避けることができます。また、予算に応じて機能を取捨選択する際の基準にもなります。

販売管理システムの場合の例
  • 要件定義:50万円
  • 基本設計:150万円
  • 開発・実装:400万円
  • テスト:200万円
  • 移行・リリース:50万円
  • 合計:850万円

【項目⑨】開発後の運用の流れ

システムは開発後も運用され続けるため、運用開始後の体制を整えておくことが重要です。具体的には、運用担当者や運用フロー、障害が発生した際のサポート体制、日々の保守作業などを決定します。

適切な運用体制を整備しておくことで、システムがスムーズに運用され、万が一のトラブルにも迅速に対応できます。運用フローが明確であれば、開発から運用への移行もスムーズに行えます。

販売管理システムの場合の例
  • システム保守:株式会社〇〇
  • ヘルプデスク対応:□□さん
  • ユーザー満足度調査:△△さん etc.

要件定義の進め方を8ステップで解説

要件定義の進め方を8ステップで解説

【ステップ①】現状の課題を整理する

要件定義の最初のステップは、現状の課題を整理することです。現状の課題を正確に把握し、何が問題であるのか、どの部分が改善を必要としているのかを明確にします。これによって、プロジェクトの目的や方向性が定まり、次のステップで具体的な要件を設定しやすくなります。

現状の課題整理においては、業務フローや現在使用しているシステムを詳細に分析し、ボトルネックや非効率なプロセスを特定することが重要です。例えば、データの入力ミスが多発している、情報共有がリアルタイムで行えない、あるいは特定の業務が手作業に頼っているなどの課題が考えられます。現状の課題を明確化することで、システム開発の目的や優先順位がはっきりとします。

【ステップ②】ターゲットの要求をヒアリングする

課題整理が終わったら、次にシステムの最終的なユーザーや関係者から直接要求をヒアリングします。この段階では、クライアントやユーザーがシステムに対して何を期待しているのか、どのような課題を解決したいのかを詳細に把握することが重要です。

具体的には、システムの利用者、管理者、IT部門など、関係者が異なると求める要件も異なるため、幅広い視点からヒアリングを行うことが重要です。ユーザーが実際に使用する機能の使いやすさや効率性に対する要求、IT管理者からのセキュリティや可用性に関する要求、経営者からのコスト削減や生産性向上に関する要求など、それぞれの関係者が持つ期待を漏れなく確認する必要があります。

ヒアリングの際は、5W2H(Who, What, When, Where, Why, How, How much)を意識すると良いでしょう。このフレームワークを用いることで、具体的で網羅的な情報を引き出しやすくなり、後に実際の要件として整理しやすくなります。例えば、以下のような質問が考えられます。

  • Who: 誰がこのシステムを利用するのか?ユーザーの種類や役職、スキルレベルは?
  • What: システムにどのような機能を求めているのか?必要な画面やデータ処理は?
  • When: どのタイミングでシステムを利用するのか?運用時間や頻度は?
  • Where: どこでシステムを利用するのか?拠点間での利用、リモート環境での対応は?
  • Why: なぜその機能が必要なのか?現行システムで不足している機能や改善点は?
  • How: どのようにその機能が動作することが望ましいか?具体的な操作方法やUI/UXの要望は?
  • How much: 開発や運用のコストに対する予算はどの程度か?

このように、多角的な視点からの質問を通して、関係者の要望を可能な限り具体的に把握しましょう。

【ステップ③】要求を整理し明確化する

ヒアリングで収集した情報をもとに、要求を整理し、具体的な要件に変換していきます。この段階では、収集した情報をただ羅列するのではなく、要件の中身を精査し、実現可能かつ具体的なものにしていくことが重要です。

ヒアリングで出された要求は、しばしば抽象的な表現や漠然としたニーズで表現されていることが多いため、開発チームが理解しやすいように整理します。たとえば「システムを使いやすくしてほしい」という要求があった場合、具体的にどうすれば使いやすくなるのかを考え、「UIデザインを見直し、重要な機能にアクセスしやすくする」「操作の手順を簡略化し、クリック数を減らす」など、具体的な改善策を定義していきます。

【ステップ④】要件の優先順位を確定する

多くのプロジェクトにおいて、全ての要件を一度に満たすことは現実的ではありません。限られたリソースと時間の中で、どの要件を最優先で実装すべきかを明確にすることが必要です。ここでは、要件の優先順位を確定し、重要な機能やタスクを先に実装するための指針を定めます。

要件の優先順位を決める際には、以下の基準を考慮することが効果的です:

  1. ビジネス価値: この要件がビジネスにどの程度の価値をもたらすか。収益や効率向上に直結する要件は、優先順位が高くなります。
  2. ユーザーの影響: ユーザーにとってこの機能がどれだけ重要か。ユーザー満足度に影響を与える機能や、日常的に利用される機能は優先度が高くなります。
  3. 技術的な難易度: 技術的に実現が難しい要件は、開発スケジュールに大きな影響を与える可能性があるため、慎重に判断します。難易度が高いものを先に着手してリスクを減らすケースもあります。
  4. リスク管理: 特定の要件がプロジェクト全体に与えるリスクを評価します。セキュリティ要件など、リスクが高いものは優先度が高くなります。

優先順位を決めることで、プロジェクトが進行する中でのリソース配分が最適化され、重要な要件から順に対応できるため、効率的な開発が可能となります。

【ステップ⑤】大まかなシステム構成を決定する

要件の優先順位が確定したら、次にシステムの全体像をイメージできるように、大まかな構成を決定します。この段階では詳細な設計までは行わず、システム全体の基本的な構造が見えるように、主要な機能やデータフローを整理します。

例えば、ECサイトを構築する場合、商品の管理システム、注文処理システム、決済システム、ユーザー認証システムなどの主要な要素を特定し、各要素がどのように連携するのかをイメージします。また、これらの要素間のデータのやり取りや、データの保管方法も大まかに決定します。

この大まかな構成が固まることで、開発チームがシステム全体の設計や実装に着手しやすくなり、今後の具体的な設計や実装フェーズにスムーズに移行できる準備が整います。

【ステップ⑥】開発会社へ問い合わせて相見積もりを取る

要件定義がある程度固まった段階で、実際に開発を依頼するための準備に入ります。複数の開発会社に問い合わせを行い、相見積もりを取ることで、各社の提案内容やコストの比較が可能になります。このステップでは、プロジェクトに適した開発会社を選ぶために、提案内容を慎重に検討します。

開発会社の選び方については、単に費用面だけでなく、以下のような点も考慮すると良いでしょう。

  1. 過去の実績が信頼できるか
  2. ブログ、SNS、YouTubeで有用な情報を発信しているか
  3. 問い合わせ時の対応が丁寧か
  4. サポート体制が充実しているか
  5. 自社の事業や課題に基づいた提案をしてくれるか

【ステップ⑦】開発会社と詳細な要件定義を行う

開発会社を選定した後は基本的な要件をもとに、さらに詳細な要件定義を進めます。この段階では、開発会社のエンジニアやプロジェクトマネージャーと密に連携し、具体的な機能や仕様を細部まで詰めていきます。

技術的な実現可能性やシステム構成についての提案も受けながら、機能仕様書や画面設計書などのドキュメントを作成し、関係者全員が合意できる仕様を確定します。ここでの綿密なすり合わせが、後の開発工程の円滑化と品質向上に繋がります。

【ステップ⑧】開発予算やスケジュールを設定する

最後に、相見積もりの結果や社内のリソースを踏まえ、最終的な開発予算とスケジュールを確定します。この段階で定めた予算やスケジュールは、プロジェクト全体の指針となるため、慎重に検討する必要があります。

予算については、見積もりの結果をもとに費用の妥当性を判断し、必要に応じて機能を取捨選択することで、予算内に収める努力が求められます。また、スケジュールについては、要件の優先順位を考慮し、重要な機能から順に実装する計画を立てます。

要件定義を成功させる6つのポイント

要件定義を成功させる6つのポイント

【ポイント①】内容や役割分担は具体的に明記する

要件定義のドキュメントには、各メンバーの役割やタスク内容を具体的に決めておくことが重要です。プロジェクトにおいて、役割分担が不明確だと、担当者が自分の責務を把握しきれず、他のメンバーとのコミュニケーションが不足したり、タスクが重複したりすることがあります。そのため、役割分担を具体的に明記することで、責任の所在が明確になり、担当者が迷わず作業を進めることができるようになります

具体的な役割分担には、以下のような情報を含めると良いでしょう。

  • 役職や役割(プロジェクトマネージャー、要件定義担当、設計担当、テスト担当など)
  • 担当タスクの範囲(設計書の作成、顧客とのコミュニケーション、システムテストの実施など)
  • 成果物の責任者(各ドキュメントの最終責任者やレビュー担当)

特に大規模なプロジェクトでは、各メンバーの役割が交錯しがちなので、プロジェクトの初期段階で明確に分担を行うことが肝心です。また、役割分担を文書化しておくと、後から新しいメンバーが参加した場合でもスムーズに引き継ぎができるため、プロジェクト全体の効率が向上します。

【ポイント②】現行システムと業務フローを詳細に把握する

要件定義を行う前に、現行システムの構造や業務フローを詳細に把握しておくことが重要です。現行システムや業務フローを理解せずに新しいシステムを設計しようとすると、既存のプロセスに矛盾が生じたり、利用者にとって不便なシステムが出来上がったりするリスクがあります。

まずは、現行の業務フローを確認し、各工程の目的や意図、担当者、使用するデータなどを明確にします。現場の担当者にインタビューを行ったり、実際の業務を観察したりすることで、業務の流れや非効率な部分、改善点を把握します。具体的な情報収集の方法として、以下のような手法が有効です。

  • 現行システムのドキュメント確認:現行システムの仕様書やマニュアルを確認し、システムの全体像を把握する。
  • 業務担当者とのインタビュー:システムを利用している実務担当者から、実際の操作手順や問題点をヒアリングする。
  • 業務フローの可視化:現行の業務プロセスをフローチャートやプロセスマップで図示し、ボトルネックや非効率な箇所を見える化する。

このようにして現行システムと業務フローを詳細に把握すると、現状の課題や改善ポイントが浮き彫りになります。そのうえで、新しいシステムで解決すべき具体的な課題を定義することで、要件定義がより効果的なものになります。

【ポイント③】開発者と認識のすり合わせを綿密に行う

要件定義の段階で、開発者と認識をすり合わせることは非常に重要です。開発者が要件を誤って理解していると、後の開発工程で仕様変更や修正が必要となり、コストと時間の無駄が生じる可能性が高まります。

そのため、要件定義の時点で開発者と綿密にコミュニケーションを取り、プロジェクトの方向性や具体的な機能要件、非機能要件について共通の理解を持つことが不可欠です。

【ポイント④】要件の抜け漏れがないか徹底して確認する

要件定義のドキュメントにおいて、要件の抜け漏れがないようにすることは非常に重要です。些細な抜け漏れが後に大きなトラブルや追加工数の原因となるため、要件定義が完了したら徹底的な確認を行いましょう

ドキュメント化された要件定義を関係者全員で確認し、フィードバックをもらうことで、網羅的な要件定義が行えます。これにより、後々の仕様変更や修正に伴う追加工数を削減でき、プロジェクト全体の効率が向上します。

【ポイント⑤】専門用語は最小限に抑える

要件定義書は、プロジェクトに関わるすべての関係者が理解できるよう、専門用語を最小限に抑え、わかりやすい表現にすることが重要です。特にIT分野では、開発者やエンジニアが理解している専門用語が一般的なユーザーには通じないことが多々あります。専門用語が多いと、関係者間での理解がズレやすくなり、後にトラブルの原因となることが多いです。

例えば、「API」「セッション」「キャッシュ」などの専門用語が含まれる場合、それらの意味を簡単に説明したり、できる限り日常的な言葉で置き換える努力が必要です。要件定義書の中で専門用語を使う場合は、次のような工夫が効果的です:

  • 注釈を付ける:専門用語の意味を注釈として記載したり、要件定義書の最後に用語集を設けて、用語の定義をまとめておく。
  • 図やイラストを活用する:技術的な内容やデータのフローなど、言葉で説明しにくい内容は図解やイラストで視覚的に説明する。
  • 非技術者向けの説明を添える:要件ごとに「この要件がなぜ必要なのか」「実際の利用シーンでどのように役立つのか」を非技術者向けに記載する。

これにより、異なる専門知識を持つ関係者でも要件を正しく理解しやすくなり、円滑なコミュニケーションが可能となります。

【ポイント⑥】ドキュメント化を徹底する

要件定義の内容は、必ずドキュメントとしてまとめ、関係者全員がアクセスできるようにしておくことが重要です。ドキュメント化することで、後からの確認が容易になり、プロジェクトの透明性が高まります。またドキュメントが残っていれば、要件の変更が生じた場合でも迅速に対応することが可能です。

ドキュメント化を徹底する際には、次のような点を意識すると良いでしょう。

  • バージョン管理:要件定義が更新されるたびにバージョンを管理し、どの変更がいつ行われたのかを追跡できるようにする。
  • アクセス権の設定:要件定義ドキュメントは関係者全員がアクセスできるようにし、プロジェクトメンバーがいつでも確認できるようにする。
  • 変更履歴の記録:ドキュメントには変更履歴を記載し、変更の内容や理由を明記することで、後から確認する際の参考にする。

また、クラウド上のドキュメント管理ツールを活用することで、リアルタイムでの共同編集が可能になり、バージョン管理も容易に行えます。ドキュメント化を徹底することで、プロジェクトの透明性と可視性が向上し、全員が共通の認識を持って進行できるようになります。


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