FDE(Forward Deployed Engineer)とは、顧客の現場に入り込み、AIシステムの開発から導入までを担うエンジニアです。
では、FDEは実際にどんなAIシステムを作っているのでしょうか。
本記事では、公式の事例ページや発表資料で裏取りできた事例だけを、専門知識がなくてもわかるようにまとめて紹介します。

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執筆者:山口 鳳汰
累計100万PV以上のAI・ノーコード開発メディアの編集長。
アプリ開発の電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。
その他、受託開発や教育など多数のノーコード事業に参画している。

運営会社:株式会社Walkers
AI・ノーコード開発を手がける成長支援カンパニー。
300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。
マーケティングやUI/UXと掛け合わせたサービス開発を得意としている。

執筆者:山口 鳳汰
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アプリ開発の電子書籍を3冊出版し、1冊はAmazonベストセラーを獲得。

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これまでに300件以上の開発/制作実績、200件以上の企業様を支援。
FDEによるAI開発・導入の成功事例10選
【事例①】旅客機の増産を支えた工場データの一元管理システム

FDEという働き方を確立したPalantirの代表的な事例から始めます。ヨーロッパの航空機メーカーAirbus(エアバス)は2015年末、旅客機「A350」の生産を、品質を落とさずに急いで増やす必要がありました。A350は部品が約500万点にのぼり、4か国・8つ以上の工場で作られるため、生産計画、部品の納入、不具合の記録といったデータが国やチームごとにバラバラでした。
そこで2015年に、Palantirのデータ統合ソフト「Foundry」を使い、これらを1つの画面にまとめる生産管理の仕組みを作っています。不具合を事前に防ぎ、部品の納入遅れにもすぐ対応できるようになり、A350の納入ペースは33%向上して目標を達成しました。
この仕組みは2017年にAirbusとの共同開発で航空業界全体のデータをつなぐ基盤「Skywise」に発展し、Palantirの事例ページによると1万機を超える航空機がつながっています。

【事例②】病院の人員配置と患者の受け入れ調整を支援するアプリ

米国の大病院Tampa General Hospital(タンパ・ジェネラル病院)は、看護師のシフト、入院患者の数、手術の予定といったバラバラのデータを1か所に集め、人員の配置や患者の受け入れ先を提案するアプリと予測モデルをPalantirと作りました。シフト当日に手作業で組んでいた配置を、数日から数週間先まで計画できるようになっています。
Palantirの事例ページには、手術後の回復室での患者の待ち時間が28%短縮、看護師の配置バランスが30%改善、受け入れ先の調整にかかる時間が83%減と記載されています。回復室向けの予測モデルの精度は95%と記載されています。
ハリケーン「イアン」の際には、災害対応のアプリを24時間以内に届けています。現場で困りごとが起きてから素早く形にする、FDEらしい動き方がよくわかる例です。

【事例③】能登半島地震の避難者を一元管理するシステムを7週間で構築

ここからは日本国内の事例です。2024年1月の能登半島地震では、避難者の情報が県の各システム、LINE、NPOの記録などに散らばっていました。石川県から依頼を受けたPalantirのエンジニアは、7週間で避難者の情報をまとめて確認できる「災害被災者データベース」を作り、2024年2月24日に稼働させています。
その後も、15種類のデータを統合して避難者の最新状況を把握する仕組みや、避難者が市町村をまたいで移動しても支援が途切れないようにする仕組みを追加しました。個人情報は、個人情報保護委員会と協力し、避難者の居場所に応じて見られる範囲が自動で切り替わるようにしています。
内閣府との取り組みでは、今後の災害にも使える全国共通のデータの型も整えられました。自治体が自前でゼロから作るのが難しい場面に、現場に入って短期間で形にした事例です。
【事例④】介護施設の記録とセンサー情報をスマホで確認できる基盤

介護大手のSOMPOケアは、日本に約6万ある介護施設の非効率を減らすため、Palantirと介護の現場向けの情報基盤を作りました。入居者のケア記録と、睡眠・呼吸・脈拍を測るセンサーの情報は、これまで別々のシステムに入っていました。
新しい基盤では、シフトで働く職員がスマートフォンで入居者のケア記録を確認・更新でき、状態の変化にあわせたお知らせも届きます。Palantirの事例ページによると、以前は30分かかっていたケアプラン作りのための情報収集が、ひと目で済むようになりました。
介護事業を担当する同社の担当役員は、さまざまなシステムをつなげて分析できたことが大きな価値を生んだと語っています。自社のデータだけでなく、他の介護事業者のデータにもつなげる構想です。

【事例⑤】鉄道の架線の異常を走行中の映像からAIが見つける仕組み

鉄道の架線は、電車に電気を送る重要な設備です。従来は車両の屋根のカメラ映像を人が見て異常を探しており、約10日かかっていました。日立レールはNVIDIA(AI向け半導体の大手)と協力し、走行中の映像をAIがチェックして、異常をほぼリアルタイムで見つけ、その位置を赤い枠で示す仕組みを作りました。
作業員に正確な位置を知らせる改修も加えたため、該当の場所を探す手間も減っています。この検証にかかった期間はわずか4か月でした。鉄道の信号や車両に詳しい現場の専門家と、ITの専門家が同じチームで動いたことが速さの理由だと、担当者は2026年9月の日立の講演で語っています。
日立はこの体制を発展させて、顧客の現場に入るエンジニアを「FDE」としてサービス化しました。FDEの考え方が日本の社会インフラの現場で形になっている例です。

【事例⑥】リース契約の見積書をAIでデータ化する業務システム

リース会社には、取引先ごとに様式が違う見積書が年間数万件届き、その内容を人の手で基幹システムに登録していました。これまでの読み取りソフトでは対応しきれない、数十年来の課題でした。三菱HCキャピタルは、LayerXが提供するAI基盤「Ai Workforce」でこの作業を自動化しています。
見積書をアップロードするだけでAIが明細を読み取り、品目の分類やコードの付与、Excelへの転記までをワンクリックで行います。2025年2月の試用では約350件を処理して正答率80%超、利用者の89.7%が省力化を実感しました。年間1.2万時間の業務削減が見込まれています(2025年6月の発表時点)。
導入の過程では、LayerXのエンジニアが現場の担当者と二人三脚で業務ルールを詰めています。顧客側も、その進め方をコメントで評価しています。
ご担当頂いたエンジニアの方には、なじみのないリース業務の理解に正面から取り組んで頂いたこと、また現場と一体感を以てプロジェクトを推進頂き大変感謝しております。
引用:AIプラットフォーム「Ai Workforce」、三菱HCキャピタルがリース資産登録業務に導入、年間1.2万時間の削減へ
こうした開発・導入をFDEに依頼した場合の費用感は、【シミュレーション付き】FDE(Forward Deployed Engineer)の導入費用の相場まとめ【2026年最新版】でまとめておりますので、そちらをご覧ください。

【事例⑦】ウェルス部門のアドバイザー全員が使う社内AIアシスタント

ここからは、AIを提供する企業やデータ基盤の企業が、自らFDEを置いて導入した事例です。ChatGPTを開発するOpenAIでFDEチームを率いるColin Jarvis氏は、2025年11月のインタビューで、FDEの代表例として米金融大手のモルガン・スタンレーを挙げています。
OpenAIのエンジニアが同社に入り込み、社内のエンジニアと一緒に調査レポートの検索精度を整え、アドバイザーに試してもらいながら信頼を積み上げました。技術的な山場は6〜8週間で越えたものの、アドバイザーが信頼して使い始めるまでにはさらに4か月かかったと語られています。
OpenAIの事例ページでは、98%以上のアドバイザーチームが日常的に利用し、回答できる範囲は7,000件の質問から10万件の文書全体へ広がったとされています。
知識とコミュニケーションの間の摩擦がゼロになったため、アドバイザーは以前は検討されていなかったトピックについても顧客に提案できるようになりました。
引用:モルガン・スタンレーは、AI eval を活用して金融サービスの未来を形作ります(OpenAI)
【事例⑧】スポーツ配信アプリのAI検索を共同で作り込む

米国の大手メディアFOX Corporationは、データ基盤の大手Databricks(データブリックス)のFDEと一緒に、スポーツ配信アプリのAI機能を作りました。Databricksのエンジニアが同社のエンジニアのそばで働き、「FOX Sports」と「FOX One」のファン向けの体験を作り直しています。
同社の最高技術責任者によると、AIのスポーツ機能を使う利用者はアプリに滞在する時間が約2倍になりました。Databricksのブログでは、共同で作った検索機能が検索全体の4分の1を担い、検索の成功率が2倍になったとされています。ライブ中継の最中も、1日に数十万回のアクセスを処理しています。
プラットフォームを売るだけでなく、エンジニアが現場に入って本番運用まで仕上げた点が、FDE型の事例です。

【事例⑨】社内文書60万ページをAIで整理する仕組み

旅行大手のExpedia(エクスペディア)では、社内の情報共有ツール「Confluence」の文書管理に、ソフトウェア企業Atlassian(アトラシアン)のFDEが加わりました。AIを使った文書整理の仕組みを広げ、60万ページを保管用に整理して、年間3,200時間の作業時間を減らしています。
AtlassianのFDEは、顧客のチームに加わって課題を見つけ、1〜2個の価値が高い用途に絞って作る進め方です。同社は、すでに100社超の大企業と取り組み、80以上のAIによる自動化の仕組みを本番で動かしたと2026年10月に公表しています。
Expediaの担当マネージャーも、FDEが「野心的なアイデアを実際の事業成果に変えてくれた」と評価しています。
【事例⑩】半導体メーカーの不具合調査と修正を進めるAI

どこまで任せられるのかを示す、規模の大きな事例です。OpenAIのFDEチームは、ヨーロッパの半導体メーカー(社名は非公表)に入り込み、設計から検証までの無駄が大きい部分をAIで効率化する10種類の仕組みを作っています。
中心となるのは、不具合の調査を進めるAIです。検証担当のエンジニアは、毎朝、夜間のテストで見つかった数百件の不具合を抱えて出社し、勤務時間の70〜80%を不具合の修正に使っています。そこでCodex(OpenAIのプログラミングAI)を土台に、まず原因を調べて報告書を書くところから始め、信頼されたあとで修正案の作成と確認依頼まで任せるように広げました。
2025年11月時点で、最初に導入した部署では20〜30%の作業時間の削減を達成し、会社全体では50%を目標にしています。社名が出ていない点には注意が必要ですが、OpenAIのFDE責任者本人の説明に基づいています。

ここまで見てきたとおり、FDEが関わる開発は、図面や仕様書を受け取って作る形とは違い、現場に入って課題を見つけ、小さく作り、使われるところまで仕上げる進め方でした。どの事例でも、現場の担当者と並走して業務の細かなルールを理解した点が成果につながっています。一方で、削減時間が見込みの事例や、社名が非公表の事例もあり、数字は発表時点のものです。自社の業務にAIをどこまで組み込めるのか、どの工程に人の判断を残すべきかは、業務の性質によって変わります。
弊社Walkersでは、“FDEに興味はあるが、自社の課題が向いているのか分からない・導入後に定着するか不安”を解決する、現場に入り込むFDEによるAI実装支援(企画から運用・内製化まで)を行っています。補助金の活用で自己負担を抑えられるケースもあるので、ぜひお気軽にご相談ください。
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